vol.8 着物のリメイク

眠っていた着物がお洒落な日傘に

夏の日差しに映える、さわやかな藍色の日傘。その奥のベンチには、緑と朱の織地が華やかなパラソル。この2本の日傘は、東京・三鷹の「ハマヲ洋傘店」の鎌田智子さんが、着物を仕立て直して作ったものです。「もともとは、藍色が結城紬の着物、奥の織地の布は帯だったんですよ。仕立て直すことで、箪笥の奥に眠っていた着物が日の目を見ると、私までうれしくなりますね」と鎌田さんは優しい笑顔で話します。

傘づくりの道に入って約70年になる鎌田さんのもとには、全国から多くの着物が送られてきます。その一枚一枚に、送り手の思い出が詰まっているのです。「この結城紬と帯を持っていらしたのは、40代の女性。お母さまが、おばあさまの還暦のお祝いにプレゼントした反物と帯だそうです。おばあさまはご自身で着物に仕立てて大切に着ていらしたそうですが、形見に受け継いだお母さまは、サイズが合わず着ることもない。そんな様子を見たお嬢さまが、日傘にしてお母さまにプレゼントしたいとおっしゃっていました」

そんなエピソードを話しながらも、傘店の奥の畳敷きのアトリエで傘づくりをする鎌田さんの手は休むときがありません。1つずつ手作業で作るため、できるのは1週間に10本ほど。「形見の着物や、傘寿の記念品としてリメイクを依頼される方が多いですね。たくさんの方が待ってくださっているので」と、80歳を超えた今も、朝から夜遅くまで傘づくりにいそしみます。

傘に生まれ変わり、太陽の光を浴びる結城紬の着物(手前)と帯(奥)。

着物を丁寧にほどく鎌田さん。傷んだ部分を避けてきれいな部分を使う。1着の着物から2本の日傘が作れる。
右下/リメイク前の着物と帯。還暦祝いということで、八掛(はっかけ:着物の裏地)は茜色で仕立てていたが、長年着るうちに傷み、もえぎ色に縫い代えたとのこと。

思い出を感じながら日常に使える喜び

傷んだところは避けて、薄い生地は二重に。
やさしさが思い出を甦らせる。

鎌田さんが傘づくりの道に入ったのは、女学校を卒業してすぐ。傘職人のもとでの修業を経て、23歳で三鷹に「ハマヲ洋傘店」を構えました。当時は、町に1軒は傘屋さんがあった時代。「1本の傘を、修理しながら大切に使っていましたね」と鎌田さんは振り返ります。

しかし高度経済成長期を迎えるころから、洋傘も大量生産・大量消費に巻き込まれていきます。そんな状況に閉塞感を抱いていたある日、鎌田さんは、ふと着物で日傘を仕立ててみようと思いつきます。「女学校の同窓会に行く私のために、母が仕立ててくれたクリーム色の八王子銘仙。何十年も箪笥の肥やしになっていたので、思い切って日傘にしてみたのです」

三鷹駅から徒歩3分ほどの場所にある「ハマヲ洋傘店」。結婚前に店を構えたため、旧姓が店名となっている。

この日傘をショーウインドーに飾ったところ評判を呼び、古い着物の日傘へのリメイクを依頼されるようになりました。「リメイクを始めて20年ほど経ちますが、着物を裁つときが一番緊張します。1着しかない思い出の着物ですから」と話す鎌田さん。「素敵な柄の着物に出会うのが、この仕事の喜び。日々、日本の和服文化の奥深さを感じています」

傘づくりの工程はすべてが楽しいという鎌田さん。一つ一つの工程が手作業で行われる。
左上/柄合わせをした生地を「型」に従って裁つ。
左下/30~40年は愛用しているという洋傘専用のミシンで生地を縫い合わせる。
右/8本の骨に縫いつける。

取材当日、冒頭で紹介した結城紬と帯からリメイクした日傘をお客さまが受け取りにいらっしゃいました。「素敵な仕上がりで、母も喜んでくれると思います。この日傘を差して、母と旅行に行けたらいいな」と話すお客さまと、その様子を笑顔で見守る鎌田さん。思い出深い着物は、日傘に姿を変え、さらなる思い出を増やしていくことでしょう。

傘の持ち手は、桜や竹など樹種も選べる。着物と一緒にボタンなどを持参するお客さまも多いという。

壁に掛けた型、ミシン、布を裁つ「包丁」など、年季の入った道具たち。鎌田さんが使う型は60年以上前に師匠から譲り受けたもの。

鎌田智子(かまた ともこ)

1930年生まれ。手づくり傘「ハマヲ洋傘店」オーナー。戦後に一家で満州から引き揚げ、傘づくりの道へ。結婚後は2人のお嬢さまを育てながら、傘職人として仕事を続けている。
ハマヲ洋傘店
東京都三鷹市下連雀3-23-10

0422-43-1666

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