vol.4 鍋島緞通

佐賀の伝統工芸鍋島緞通に魅せられて

約三百年の歴史を誇る絨毯(じゅうたん)として知られる鍋島緞通。江戸時代に佐賀の農家の主が海外から絨毯織の技術を習ったことが始まりといわれ、佐賀藩御用達の品として幕府、大名家などへの献上品に用いられました。明治時代以降は一般への販売ができるようになり、現在まで手間をかけて織り上げる貴重な伝統工芸品として伝わっています。

その鍋島緞通に魅入られ創作活動を続けてきたのが、手織り工房「織(おり)ものがたり」のデザイナーであり、織り手でもある木下由紀子さんです。「大学で染色や織りの勉強をしていた時に、鍋島緞通の存在を知りました。私は佐賀県に隣接する福岡県久留米市で生まれ育ったので、身近に手織りの技を守り伝えてきた織物があると知って親近感がわいたのです。そこで、大学3年の時に鍋島緞通を織っている現場を訪ねてみました」

鍋島緞通の特長は、その肌触りの良さ。これは経糸(たていと)・緯糸(ぬきいと)・織り糸ともに木綿を使っているためで、高温多湿な日本の気候風土に適した絨毯といわれるゆえんでもあります。木下さんは「鍋島緞通では、この肌触りを生み出す丁寧な織りを、最初から最後まで一人で織ります。分業ではなく、すべて一人の織り手が作ることに魅かれ、私もこの道に進みたいと思いました」と当時を振り返ります。

織機に向かう木下さん。経糸に糸を掛けたと思った瞬間には既に1目織り上がっているという見事な早業。図案を見ながら同じ色の目を拾い、順に織り上げていく。

大学卒業後は、久留米市の工房で7年ほど働き、織りの技を身に着けました。一通りの技を習得するのに数年はかかるといわれる道のりは決して楽なものではないでしょうが、木下さんは「注文してくださった方がお使いになるところを想像しながら織り上げていくのが何よりの喜び。つらいと感じたことはありません」と笑顔で話します。「けれども、若い世代に鍋島緞通に触れていただく機会が少ないのは残念でした。知人や友人からは『高級すぎて気軽に見に行くことができない』と言われることもありましたね」

締め金で緯糸を叩く。常に均一な力を加えることが求められ、仕上がりに影響する重要な作業。織り手の技術が表れる。

一段織るごとに織り糸にはさみを入れ、毛足の長さをそろえる。鍋島緞通ならではの工程。

方眼に描かれた図案を基に複雑な文様を織り上げる。

かつては畳に敷いていた緞通を壁に掛け、文様の美しさを楽しむタペストリーに。こちらは藍、茜、槐(えんじゅ)で染めた糸を使った草木染めの作品。

フローリングや洋家具に合わせてもしっくりとくるデザインや色調の作品も多い。

鍋島緞通をもっと身近に感じてもらえるように価格を抑えた「椅子敷き」など、サイズの小さなものも作っている。

手織りの技と良さを多くの人に伝えたい

そんな木下さんに転機が訪れたのは、結婚と子育てで織りを一時お休みしていた時のこと。夫の真さんが鍋島緞通の工房「織ものがたり」を立ち上げることになったのです。これを機に、木下さんは再び鍋島緞通と向き合うことになりました。

木下さんの工房があるのは、城下町の面影を残す歴史的建造物が集まる佐賀市柳町。その一角にある古民家で、創作活動を続けています。緯糸を通した後に締め金で叩くトントントンという音が響く工房で織機に向かう姿からは、凛とした雰囲気が感じられます。

蔵の2階に設けられた織り工房。

工房にはギャラリーやショップが併設され、気軽に立ち寄れる雰囲気になっているのも特長です。「私自身が鍋島緞通に触れてその魅力を知ったように、この工房が鍋島緞通の良さを知っていただく場になればと願っています」

また「織ものがたり」では、より多くの人に鍋島緞通に親しんでもらうために、実演・展示会を催したり、工房では小学生などの見学も受け入れています。木下さん自身の作品づくりにおいては、和室が少なくなった現代の暮らしに合わせてフローリングに合う明るい色調や幾何学模様のデザインを取り入れるなどの工夫をしているそうです。「今の暮らしになじむ緞通を追い求めています。まずは身近に感じていただこうと、ミニサイズの緞通も作っているんですよ」と手のひらに載る大きさの緞通を見せてくれました。

二代・三代と受け継がれるという鍋島緞通。「使い続けることで、お客さまやそのご家族と一緒に育っていくのが緞通の良さ。修理しながら長年使っていただける伝統工芸の良さを大切にしつつ、幅広い世代に受け入れられる新しいものづくりをしていきたい」と話す木下さん。「最近は染めや綿作りにも挑戦しているんです」と語る表情が、充実した創作活動を物語っていました。

草木染めの作品では、茜の根や槐(えんじゅ)の蕾などから糸を染める。

工房は、明治期から残る「旧森永家住宅」。当時の雰囲気そのままに復元した趣ある建物で、佐賀市歴史民俗館に指定されている。

工房の1階部分にあるショップ「さがしもの」。緞通をはじめ、佐賀市の工芸品や手作り雑貨を扱っている。

鍋島緞通の工程

1. 図案

方眼紙に模様を図案化する。古い緞通からスケッチを起こしたり、伝統柄の色合いを替えたりと工夫している。

2. 染色・合糸

染色した木綿糸を、お客さまのオーダーに合った厚みになるよう束ね合わせる。

3. 経糸かけ

織り上げる緞通の幅に合わせて経糸を掛ける。2人がかりで行い、均等な張り具合で結んでいく。

4. あぜ拾い(織り準備)

1本おきに経糸を拾い、あぜ棒を取り付ける。

5.織り

図案に基づいて前と後ろの経糸を順につまみ、織り糸を絡ませて包丁で切る。

6.緯通し・締め付け・裁断

緯糸を通し、締め金で叩く作業を一往復した後、切りそろえる。この工程を一段ごとに行う。畳一畳分を織り上げるのに1カ月以上かかるという。最後に経糸を結んで房を作れば完成。

木下由紀子(きのした ゆきこ)

1974年福岡県久留米市生まれ。大学在学中に鍋島緞通に出会い、卒業後に久留米市内の緞通制作会社に勤務。同社を結婚を機に退職後、2012年に工房「織ものがたり」設立とともに現場復帰を果たす。「織ものがたり」ではデザイナー兼織り手として制作を行っている。

http://orimonogatari.com/

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