vol.2 紅型

「ニライカナイ」を紅型で表現したい

色鮮やかな配色と沖縄伝統の模様が華麗な染色技法・紅型。13世紀頃に琉球王朝の王族などの衣装を染めたことに端を発し、沖縄の気候風土とともに、代々技が受け継がれてきました。

その紅型の世界で、独自の感性を生かした作品づくりに取り組んでいるのが、若手作家の新垣優香さん。沖縄に生まれ育った新垣さんは、首里高校の染色科を卒業後、工房での研鑽を経て、2009年に独立しました。自らが歩んできた道を「もともと不器用なので、これがいいと思うと、そこにしか目がいかなくなってしまうんです。紅型に取り組む中でも、今しか出せない色を表現したいという思いが強くなり、独立を決意しました」と振り返ります。

そんな新垣さんの表現の特徴は、伝統的な紅型をベースにしつつ、オリジナルの手法を大胆に取り入れていること。なかでも「グリッター」と呼ばれる光る粉を紅型に取り入れたのは、新垣さんが最初だそうです。「5年ほど前に、お菓子のパッケージデザインの仕事をしたときに『光る素材を使ってほしい』と言われたのがきっかけです。光に当たるとキラキラと輝くのが気に入って、紅型にも使うようになりました」

大型パネル作品の仕上げ段階。グリッターを筆で入れていく。

紅型の模様についても、鳳凰、龍、雪輪、鶴などの古典柄や、デイゴ、芭蕉、魚といった沖縄ならではの柄のほかに、身近にある自然をモチーフにしています。「カメラを片手に、地元の海や森を訪ね、花や蝶、空などを撮影して作品の構想を膨らませます」。新垣さんの作品に描かれているのは、彼女の目を通した「沖縄」なのです。

新垣さんは「私の創作コンセプトは『ニライカナイ』です」と言います。「私の中で『ニライカナイ』とは『海の彼方にある楽園、誰もが笑顔でいられる場所』というようにイメージしています。私の作品を見て、笑顔になっていただけたら、何よりもうれしいですね」

焼物や織物など伝統工芸の継承地でもある読谷村にアトリエを構える。窓上にはパネル作品が飾られている。

伝統的な染料に、グリッターなど新しい素材を組み合わせている。

アトリエから見える残波岬までは車で約5分。読谷村の豊かな自然が作品のモチーフとなることも多い。

紅型の魅力を広く伝えるために

これまでに数々の賞を受賞し、新進作家として実績を積んでいる新垣さん。作品づくりと並行して力を入れているのが、「より多くの人に紅型の魅力を知ってもらうこと」だと言います。

そのひとつが、着物と帯以外の作品づくり。「着物や帯は、お値段も高いですし、今は着る人も少なくなってきていますよね。そこで、もっと身近な生活の中で、紅型の色を生かせるものをと、パネルづくりを始めたんです」。紅型の鮮やかな色調が空間を華やかにするパネルは評判を呼び、沖縄北谷のホテルのロビー等に作品制作を依頼されるほどになりました。

さらに、紅型の模様をプリントしたポーチやバッグ、文房具など、手染め以外の技法を用いたモノづくりも展開しています。「今年は、クラウドファンディング(自らの企画に必要な資金を、インターネットを通じて不特定多数の人から調達して、企画を実現する手法)で、紅型のデザインを使ったマグカップとお皿を作りました。日常の食卓の中で伝統的なデザインの食器が使われることで、紅型が話題に上るといいなと思ったんです」。この食器は、紅型を全く知らない若い層から、懐かしさを感じるシニアまで幅広い層の反響を呼び、新たな出会いの場となったという。「クラウドファンディングなんて縁遠いものと思っていましたが、伝統工芸を伝えていくための、現代ならではのかたちかもしれないと思いました。挑戦して良かったです」

今後も一生紅型と向き合い、作品を作り続けたいと語る新垣さん。「沖縄の伝統工芸ですから、沖縄を拠点にしつつ、沖縄、日本にとどまらず、外の世界に視野を広げていけたらと思っています。自分にできる表現を続ける中で、より多くの方が紅型を知るきっかけになるような活動ができたらいいなと思っています」

新垣さんの作品のファンであるお嬢さまのために、お母さまがオーダーした成人式用の反物。右はデザイン画。

展覧会に出展予定の最新作。身近な自然であるアダンやクワズイモなどからイメージを膨らませた。

紅型を知ってもらうきっかけになればと企画した、紅型の模様をプリントしたバッグ。

紅型の行程

1. 図案づくり

摘んできた花からイメージを膨らませ、具体的に図案に起こしていきます。

2. 型彫り

図案に型紙用の紙を貼り付け、丹念に彫っていきます。

3. 紗張り(しゃばり)

彫った型紙の上に紗(網目状の絹)を張り、漆を塗って強度を上げます。

4. 型置き

生地の上に型紙を置き、糊をヘラで均一に塗ります。糊を塗ったところが色が入らない部分になります。

5. 色挿し

生地に色を入れていきます。顔料を調合して必要な色をつくり、染めていきます。

6. 隈取り

図柄を立体的に見せるために、濃い色をのせたりぼかしを入れます。紅型の特徴的な工程です。

7. 水元(みずもと)

生地に色が定着したら、生地をぬるま湯につけ、糊をふやかして水で洗い流します。

8. 完成

新垣さん独自の技法であるグリッターを使い、全体に輝きを与えるように筆入れをします。

50センチ四方のサイズでも、完成までに約2週間を要します。

机に向かい、図柄を立体的に表現するために、より濃い色をのせたりぼかしを入れる「隈取り」の工程を行う。

床で「型置き」の工程を行う。型紙は「紅型の財産」といわれ、新垣さんも高校生の頃からの型紙を大切に保管し、使っている。

新垣優香(あらかき ゆうか)

1985年沖縄県那覇市生まれ。沖縄県立首里高等学校の染織デザイン科を卒業後、首里琉染、玉那覇紅型工房、沖縄県工芸指導所(紅型コース)を経て2009年に独立。2011年と2012年に「りゅうぎん紅型デザインコンテスト」で2年連続大賞受賞。日本美術展覧会(日展)入選、日本新工芸展3年連続入選など、着実に実績を積み重ねている。

http://arakakiyuuka.com

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